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社会制度地方・地域
2018.5.16

連載「ヤバいルール」 〜まちをツマラナクする制度を斬る(1)

日本はじわじわ急速に、ヤバいことになってきてます。気づいているけど変われない、わかっちゃいるけど難しい。そこには制度の壁は常にある。何がヤバいのか。まちをツマラナクする『ルール』たちについて、地方創生大全や東洋経済の連載などでも知られる、地域の論客、木下斉が語ります。
木下斉(まちづくり起業家)

全国各地のまちで、そのまちを活性化させようとする様々な取り組みが立ち上がり、多くの注目を集める時代になりました。

本連載では、まちと制度にフォーカスし、その不具合と対応策、具体例などを毎回整理していきたいと思います。

社会はもはや変わった。

かつてのまちの活性化事業は、大都市と比較して立ち遅れたインフラなどを整備して一定以上に均質的に近代的にすること、だったりしました。上を伸ばすというよりは、全員がある一定のレベルに達するようにするまちづくり、といったほうが良かったかもしれません。しかし、近年成果をあげる取り組みは、地方の特殊性をテコにした「いかに他と異なることに取り組むか」という軸が重要だったりします。

また、社会も大きく変わりました。

かつては人口爆発をおこし、家も事務所も店舗も不足している時代に「いかに供給するか」ということが社会課題でした。今は逆に家も事務所も店舗の余り余って、空き家・空き店舗問題なんてことが議論され、地方では土地の値段は上がり続ける神話は遠い昔に崩壊し、むしろ「お金を払うから土地を引き取って欲しい」なんて募集をかけるところまで出てきました。今は需要に即して適切に供給を絞ったり、組み替えたりする知恵が求められています。

そう簡単に制度は変わらない。

しかしこの社会の変化があまりに急速に進みすぎていることから、残念ながら、制度の変化が、社会の変化に追いついていないということが多々あります。特に法律などに位置づけられた制度は、その改正についても過去の法律との整合性をつけなくてはならず、関連する法律すべてを見回した変更をしなくてはなりません。しかも政治決定のプロセスを経るため、多様な価値観の人たちがその変更が必要であるかどうか、とともに、変更によって割りを食ってしまう人、得をする人、との政治的駆け引きも発生します。つまりは、変わっている途中、で制度そのものを一気に変更するというのは、現実的に極めて難しい側面があります。様々な不都合が起きながら、「この方向で変化するよね」というのが分かってもなお変わらず、そもそもこんな制度使う人いないよね、といっても残ることさえあります。ただ、さすがに新たな社会活動の中で問題が大きくなれば、変化する議論が進むのはあるわけで、変化がある程度しきった段階で制度は追いつけばいいほうと思うのが大切だったりします。

最初に制度が変わって社会がかわるということは、環境基準など稀有なケースです。

制度を変える前に「実態」を増やす

本連載の要旨は、「なんで制度変わってないんだアホか!」という話ではなく、今の実態の中で、こういう制度が新たな取組みのハードルになっている。ただ、いくつかの事例ではそのハードルを様々なカタチで回避している、今後こういうものをより活発にできるようにするためにはどうするか。という制度との向き合い方といったあたりを中心においていきます。特例措置や特区制度、用途を異なるカタチにするなど、様々な工夫が全国各地の現場にはあります。

そのような実態が色々と増加していけば、いよいよ臨界点突破して制度側が変わっていく契機になることも期待できる、一番の近道とも言えます。制度を変えたいと行政側の担当者が思っても、上司への説明、政治家への調整などの過程で「そんな変更しても、そもそも活用して何か新しいことやるやつはいるのか」という質問で心が砕けることも多くあります。そりゃ制度が変わってからしか本来は実態は分からないわけですが、それでは面目たたないというのも分からないではありません。

だからこそ、「今の制度の中でもこういう工夫をして、こんな活用しているケースが多数各地にあって、だからやはり制度をもうそろそろ変更したほうがいいと思うわけです」と全国各地での取り組み事例を紹介されると、誰もやらないとは言えなくなるわけです。

少し逆説的ですが、制度があるから実態があるというのではなく、制度の枠の中で新たな時代に対応した「実態」を先行的にいかに増やすか、というのが制度変化への一歩だったりします。

まち×制度、で迫る

このような観点にたって今回の連載では、様々な制度を取り扱えればと思っています。

ひとまずは「まち×制度」という観点で迫ってまいりたいと思います。

国の制度という話もありますが、近年では規制緩和の方向は強まって、様々な制度の縛りは改善されてきています。しかしながら、それでもまだ様々な活用、時代変化によって逆効果となるインセンティヴになる制度は多々あります。

また、国が制度変更しているにもかかわらず、地方が対応していない場合もあります。法律上は既にOKなのに、条例で禁止されていたり、ということもあります。さらには地方分権一括法が施行されて地方が独自にできることが増えたはずの今でも、国が均質的な制度を作り、全国各地の自治体が条例で対応していくという「社会観」の縛りも色濃く残っています。そのため、「地方で決めてください」となっている内容についても、一々国としてどうするか方針を定めて欲しいとしてしまうこともあったりします。市長がオーケーといえば通る話が、一々国にガイドラインをつくってもらって、、、みたいな話になってせっかく地方それぞれの独自性がだせる話がそうなっていないこともあります。

それら具体的な制度を取り扱いながら、かといって特段、私は法律家でもないので制度解説というよりは、まちの活性化という観点からみた際の「制度」という意味合いで迫ってまいりたいと思います。

1. 意思決定が重複する道路制度

2. 交通行政駅直結なのに義務付けられて余りまくる駐車場附置義務制度

3. 再開発で増え続ける公開されてない公開空地制度

4. 問題を深刻化する対処療法的な補助金制度

5. 「墓標」を増加させる再開発事業制度

6. 空き家増加時代に生き残る区画整理事業制度

7. 法律が変わっても条例が変わらなくてはならない公園制度

8. 地方分権時代の地方交付税交付金制度

9. 臭くて汚い時代を引きずる河川利用

10. 意欲的な事業者が参入しにくい指定管理者制度

11. 本来頼みたい人に頼めない入札制度

12. 官民人事流動化が進まない公務員人事制度

これらの制度問題についてその分野の専門家の方などにもお聞きしながら連載して参りたいと思いますので、よろしくおねがいいたします。