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景観 / デザイン公共空間
2018.5.17

歩道を合法的に使う方法、教えます。
〜建築家 西村浩さんインタビュー

今回は道路の話。海外にいくと道にいっぱいテーブルを出して食事しているのを見かけますが、日本では店の前の歩道に座席を出したり売り物を並べたりするのは「違法」なのです。「え、それってつまんないじゃん!」と感じる人も多いこの話、建築家の西村浩さんがそれをクリアする方法を考えたらしいという噂を聞いたので早速聞きに行ってきました。
聞き手:林厚見(東京R不動産)
西村 浩(にしむら・ひろし) 1967年佐賀県生まれ。ワークヴィジョンズ代表。岩見沢複合駅舎で日本建築学会賞など受賞。土木・建築・街づくりまで横断的に企画・デザインを推進している。

ー 西村さん、なんか歩道を面白くするアイディアがあると聞いたんですが。

ほいほい。あるよ。

ー 歩道にテーブル並べて食べられるようにしたり、店の前でモノ並べたり、アレができないのを解決するっていう。あれは原則として違法なんですよね?

そうそう、違法違法。浅草のホッピー通りも違法だからね。区が改善要求とか出してるよね。

ー まじっすか。もうちょっと詳しく説明お願いします。

まず道路っていうのはね、道路法と道路交通法というのがあるわけだけど、この話は道路交通法ですね。これは警察庁マターなのよ。で、道路は通るためのものだから、そこに客席つくったりするのはダメだってことになってます。本来の目的である通行の邪魔であるとか、災害時に問題になるとか、そういうことだよね。

ー う〜ん、でも海外とかいっぱいあるじゃないですか、そういうの。

そうね。あった方がいいよね、明らかに。だって楽しいもんね。広い歩道は日本にもあるしね。で、実際やってるところはあるのよ。

浅草のホッピー通りの”せり出し”も本来は違法。台東区は全店舗に改善要求を出した

ー 確かに。新宿のモア四番街(バーニーズの前)なんて思いっきりやってますよね。あれもどうやら特別に許可されたものみたいですが。で、西村さんのアイディアってやつを教えてください。

簡単に言うとね、まず店の建物があって、その前に歩道があって、車道があると。で、例えばあるケースでいうと、車道をちょっと細くして歩道を広げようってことになってる事例があるのね。で、歩道に余裕ができるんだったらそこを店が使ったら楽しくなるね!と思うわけだけど、警察の許可がすっと出ることはない。そこで、この店の前の2.5mほどを「広場」にするのさ。

ー 広場っていうけど歩道ですよね。

そうなんだけど、扱いを変えるの。ここは道路(歩道)でなく広場です、っていうことをオフィシャルに決めるわけ。すると警察管轄から外れる、道路交通法から外れるわけ。

ー なるほど。そしたらできちゃうんですか?

できるの。単純でしょ?意外とこれは発明なんですよ。

...

ー むむ、発明ですね。コロンブスの卵じゃないですか。その変更っていうのは実際できるんですか?

あはは。今やってる街の行政の人が「これならできる!」って言うのよ。多分これは一般的にそんなにハードル高いことじゃない。もちろん歩道の幅に余裕がある必要はあるけど。

ー WOW・・なんかもっと長い話かと思いきや一瞬で終わっちゃったじゃないですか。

ま、そやね。そういうもんよね。これやりたい!って思って考えれば解決案は出るもんなんだよ。まあでもそれは今まで色々な制度の壁に当たってきた経験と苦悩の歴史があってこそ出てくるんですけど!笑。

ー それはそうでしょうね。経験や苦労の蓄積があってこそシンプルなアイディアに至ると。楽しいですねルール発明。

あ、ちなみに、接道の問題があるでしょ?「建物は道路に接してないといけない」という建築基準法の基礎ですよね。建物の前が道路じゃなくなるといきなり違法になっちゃうんじゃないか!という懸念。

ー 確かに。やばいですね。

それがですな。広場でも接道してるとみなすことは法律上でも可能となっているの。基準法43条の1ってやつです。「敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他国土交通省令で定める基準に適合する建築物」で、交通安全上支障がないと審査会が許可したものはOK、っていうのがある。

ー ははぁ。そこはよくできてるんですな。

だね。あ、続きだけど、この話の次の問題は、管理です。

ー ほうほう、まだある。

うん、まず歩道の一部が線状の「広場」になると、その部分は警察の管理責任は外れるんだけど、そこが道路でなくなるので、場合によっては自治体の道路管理者でない別の管理者が関わることになる可能性がある。それまでは道路として一括管理すればよかったところに、同じ空間を2つの部署で管理するようなことが起こる可能性があるわけです。それって、行政にとってはとても面倒なことになるので、そこをどうマネジメントするかが課題になるわけです。そこで民間側でちゃんと管理していく組織がエリアマネジメントとして関わるとうまくいくんだろうなと思います。

ー なるほどです。都市再整備推進法人ってやつですか。

例えばそうね。管理する主体がちゃんと信用できることが大事。やっぱり公共が管理するとなると、なぜあそこだけが・・みたいな話が出て来るじゃない。だから民間の沿道経営体がやるというのがいいんだよね。

...

ー なるほど、その空間に面する店の人たちが自ら管理ルールをつくって管理していきます、となると「うーん、あいつらは確かにがんばってるからな・・」という話になるわけですね。道路の使用料も当然、自治体になにがしか支払う取り決めをするということですね。

基本的にはそうですね。まあそこまで含めてきちんと整理できれば、この問題は一歩前進というわけ。もちろんそれ以外にも、事故が起きた時の責任区分とかの問題は議論が必要なんだろうけど、解く方法はあると思いますね。まあしかし、この考え方自体はあくまで過渡期的なもの、今あるルールの中でなんとか解くための知恵であって、最終形ではないと思いますよ。

ー 川でも同じような話ありそうですよね。

あるね。川だと河川管理用道路ってのがあるんだけど、これも大阪の北浜テラスなんかでは民間の管理主体ができて、うまいことやってるよね。

ー あれはいいですよね。地元民間の協議会と行政が話し合って実現した例ですね。しかし今回の歩道を広場にする話って、その「ルールのうまい使い方」が共通認識になって皆がやるようになっていくと、そういう新たなルーチンが生まれるということですよね。ルールの使い方の新たなルール、みたいな。

ですな。その頃には元の法律にも影響を与えていくんじゃないかな。

ー 民間側、使いたい側、使ってトクする側が自らgive & takeで街に寄与することの一例ですね。さすが西村兄貴。この話が現実にどうなっていくか楽しみですね。そして次のネタも楽しみにしてます!

おれのネタもいいけどお前も考えろよ!

ー はいすみません!今回はありがとうございました!